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2019.03.14 <学術論文>更新しました。
2017.03.30 <受賞及び栄誉>、<学術論文>、<学術誌ー大村記念特集号>更新しました。
2015.09.11 <略歴>、<受賞及び栄誉>、<学術論文>更新しました。
2014.03.27 <受賞及び栄誉>、<学術論文>更新しました。
2013.11.06 <学術業績>更新しました。
2013.10.02 <学術論文>更新しました。
2013.06.17 <略歴>、<研究業績>、<学術論文>更新しました。
 
 

2014年3月

大 村 智
山梨県韮崎市出身
生年月日:1935年7月12日

<略歴>

  • 1963年 3月 東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了
  • 1963年 4月 山梨大学文部教官助手(〜1965年3月)
  • 1965年 4月 (社) 北里研究所入所
  • 1968年 9月 薬学博士号取得(東京大学)
  • 1970年10月 理学博士号取得(東京理科大学)
  • 1971年 9月 米国ウエスレ−ヤン大学客員教授(〜1973年1月)
  • 1975年 4月 北里大学薬学部教授(〜1978年6月)
  • 1981年 5月 (社) 北里研究所監事(〜1984年5月)
  • 1984年 5月 (社) 北里研究所理事・副所長(〜1990年6月)
  • 1985年 7月 (学) 北里学園理事(〜2003年6月)
  • 1990年 6月 (社) 北里研究所理事・所長(〜2008年3月)
  • 1993年 2月 (学) 女子美術大学理事(〜1997年1月)
  • 1997年 2月 (学) 女子美術大学理事長(〜2003年5月)
  • 2001年 4月 北里大学北里生命科学研究所教授(〜2007年3月)
  • 2002年 4月 北里大学大学院感染制御科学府教授(〜2007年3月)
  • 2002年10月 21世紀COE プログラム「天然素材による抗感染症薬
  •          の創薬と基盤研究」拠点リーダー(〜2007年3月)
  • 2003年 6月 (学) 女子美術大学名誉理事長(〜現在)
  • 2005年 3月 米国ウエスレーヤン大学 Max Tishler Professor (〜現在)
  • 2005年 4月 山梨県総合理工学研究機構総長(〜2007年3月)
  • 2007年 4月 北里大学名誉教授(〜現在)
  • 2007年 4月 北里大学北里生命科学研究所天然物創薬推進プロジェクト
  •          スペシャルコーデイネーター(〜現在)
  • 2007年 4月 (学) 女子美術大学理事長(〜2015年6月)
  • 2008年 4月 (学) 北里研究所名誉理事長(〜2012年6月)
  • 2013年 3月 北里大学特別栄誉教授
  • 2015年 7月 (学)女子美術大学名誉理事長


<研究業績>

 大村 智 博士が主導する北里研究所創薬グループは、1965年来、微生物の有機化合物生産能を人類の福祉と健康に役立てることを目指し、先端的研究を続け、今日に至っている。
 先ず、有用微生物の新規分離法を導入してこれまでにKitasatospora属、Longispora属、およびArbophoma属など、13新属をはじめ、42新種の微生物を発見した。
 次いで、これらを含む土壌分離株から抗生物質を始めとする生理活性有機化合物を見出す新規探索系を確立し、これらを用いて470種余りの構造的にも生物活性面においても興味ある新規物質を発見したSplendid Gifts from Microorganisms, 4th Ed. (2008), Tetrahedron, 67, 6420 (2011)。内、26種の天然物またはそれらの誘導体は、医薬、動物薬、農薬および研究用試薬として多く使われている。以下に代表的な化合物について発見年代順に概要を述べる。
 大村博士によって分離・構造決定および作用機序が研究された真菌Acremonium caerulens によって生産されるcerulenin は世界最初の脂肪酸(脂質)生合成の阻害剤として注目を集め、後のコレステロール合成阻害剤スタチン類の発見、開発の先駆物質となった。また、現在でも研究用試薬として重要視されている(J. Antibiot, 20, 349 (1967)), Bacteriol. Rev., 40, 681 (1976)).
 微生物の生産するアルカロイドの探索の中で発見したstaurosporine は発見後10年余りして、これがプロテインキナーゼCの阻害作用を有していることが見出された。プロテインキナーゼCと発ガンとの関わりが注目を集める中でこのstaurosporine の発見は、後にこの物質の構造と生物活性の研究が抗がん剤の開発に大きなインパクトを与えることとなり、最も多く使用されている重要な抗がん剤imatinib (Gleevec®)やGeftinib (Iressa®)などの開発に結びついたことは、よく知られているJ. Antibiot., 30, 275 (1977), J. Antibiot., 62, 17 (2009), Chem. Rev., 113, 6761 (2013). 一方では、staurosporine は細胞情報伝達などの研究に用いる生化学研究用の試薬として最も多く使用されている天然物と言われている。この化合物を研究に使って発表している科学論文は最近20年の間、年平均で600報にのぼっている。
 米国メルク社との共同研究によって発見・開発したStreptomyces avermectiniusの生産するマクロライド抗寄生虫抗生物質avermectin のジヒドロ誘導体ivermectin は、動物薬として畜産およびペットに使われ1981年発売の翌々年より20年余り世界の動物薬売り上げNo. 1の位置を保った。これは、またヒト用抗寄生虫薬 (Mectizan)としても開発されたAntimicrob. Agents Chemother., 15, 361 (1979), Nat. Rev. Microbiol., 2, 984 (2004)。WHOおよび関連機関による2つの重篤な熱帯病、オンコセルカ症およびリンパ系フィラリア症の撲滅プログラムがメルク社および北里研究所によって無償供与される本薬剤を用いて展開されている。本薬剤は2012年1年間に2億2千万人に投与されており、前者は2025年に、後者は2020年に撲滅を達成できる見通しが発表されている(WHO Second Report on Neglected Tropical Diseases “Sustaining the drive to overcome the global impact of neglected tropical diseases”)。前者は中南米では既にほぼ撲滅を達成しており、目下アフリカに於いて本プログラムが大きく展開されている。Avermectin を生産する菌は大村博士らが発見したS. avermectiniusが唯一のものであり、現在でも本菌が工業的生産に用いられている。以上のことによりavermectin の発見は当時四半世紀最大の発見、あるいはペニシリンの発見に匹敵するとも言われている。
 また、他のマクロライド抗生物質leucomycin, tylosin, spiramycin, erythromycin などに関しても構造、構造と生物活性等の研究にも優れた業績を挙げている。Leucomycin の誘導体rokitamycinとtylosin の誘導体tilmicosin は医薬として実用化された。
 これらの他に大村博士によって発見されたlactacystin (J. Antibiot., 44, 113 (1991))およびherbimycin (Tetrahedron Lett., 20, 43213 (1979))については、後に前者はproteasomeを、後者はHsP-90を阻害することが判明し、Lactacystin が抗がん剤Bertezomib (Velcade®) (Neoplasia, 7, 1104 (2005)) の開発の基となったように、多くの関連物質が抗がん剤として開発され、或はされつつある (Tetrahedron, 67, 6420 (2011))。これらはまた、生化学的研究の試薬としても広く使われており、lactacysin は2004年にノーベル化学賞を受賞したA. Hershko教授 およびA. Ciechanover 教授の「蛋白質分解制御の仕組みの発見」に大きく寄与した。
 これまでに汎用されて来たネオニコチノイド農薬が環境問題で使われなくなっており、代わる農薬の開発が熱望されている。このような折に大村博士等によって発見されたpyripyropene (J. Antibiot., 46, 1168 (1993)) の誘導体が優れた抗昆虫(アブラムシなど)活性を有していることが判明し、農薬としての開発がMeiji Seika Pharm およびBASF(独)との共同で進められ、最終段階に入っており、2〜3年後に発売される見通しである。
 その他、ミトコンドリアComplex IIの強力な阻害剤atpenin A5、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤arisugacin A、長鎖アシルCoAシンテターゼ阻害剤triacsin Cなどが研究用試薬として広く使われている。Triacsin C (J. Antibiot., 39, 1211-1218 (1986)) は2013年のノーベル医学生理学賞受賞者のJ. Rothman 教授の研究に使用され「蛋白質を包み込んだ小胞が目的の場所に運ぶ仕組みの解明」に多大な貢献をした(Cell, 59, 95-102 (1989))

 以上のように大村博士らによって微生物生産能力を引き出して得られた天然有機化合物は、医薬・農薬あるいは生化学研究用試薬として使われ、人類の福祉と健康の向上に多大な貢献をしている。
 上記探索研究と平行して大村博士は、微生物の物質生産能力の詳細を明らかにし、これを人類に役立たせるために20世紀後半から微生物の生合成遺伝子の解明と応用の先端的研究を進めた。
 先ず、avermectin 生合成経路の一部がブッロクした種々の変異株を取得し、それらの生産する各種生合成中間体(precursor)を採取して生合成経路の概要を把握した(J. Bacteriol., 169, 5615 (1987))。次いでそれら変異株の変異箇所を染色体上で特定し、これを起点としてavermectin の生合成に関わる17個の全遺伝子をクローニングすることに成功した。さらに遺伝子それぞれの機能を明らかにすることでavermectin 生合成機構の解明を完成させた(Chem. Rev., 97, 2591 (1997)
 次いで、この生産菌S. avermectiniusの全ゲノム解析を世界に先駆けて成功し、この放線菌がavermectin の他に37種の有機化合物(第二次代謝産物と呼ばれる)を作る遺伝子を有することを明らかにした(Proc. Nat. Acad, Sci., USA, 98, 12214 (2001), Nature Biotechnol., 21, 526 (2003)ことは、この研究領域に携わる研究者を驚かせ、また世界的に高い評価を受けた。
 現在、微生物の生合成遺伝子を操作する(genetic engineering)ことで新規な物質を創製する研究が盛んに行われているが、大村博士が英国のDavid A. Hopwood博士との共同研究で世界最初の遺伝子操作による新しい抗生物質、mederrhodin を創製した(Nature, 314, 642 (1985))ことは、この領域の研究の先鞭を付けたものであり、特筆に値する。この遺伝子操作による新物質創製は、微生物の物質生産能の幅を一段と広め、今後の発展が期待されている。
 以上のように、大村博士は新規微生物および優れた抗生物質を始めとする生理活性物質の発見とそれらの応用研究、次いで将来に向けて微生物物質生産能力を一層引き出すために生産する有機化合物の生合成およびそれに関わる遺伝子の解析を行い、生産菌の物質生産能の解明と遺伝子操作による新規物質の創製へと絶えず微生物バイオテクノロジーの先端的研究を行い、この領域の研究を牽引して来た業績は世界的に極めて高い評価を受け、関連する諸学会の最高位の各賞を受賞している。   (Mar., 2013)


<受賞及び栄誉>

ヘキスト・ルセル賞(米国微生物学会、1985)、日本薬学会賞(1986)、上原賞(上原記念生命科学財団、1989)、日本学士院賞(1990)、チャールズ・トム賞(米国工業微生物学会、1991)、紫綬褒章(1992)、フランス国家功労勲章(1992)、米国工業微生物学会功労賞(1995)、藤原賞(1995)、日本放線菌学会特別功績功労賞(1995)、ローベルト・コッホ金牌(独国、1997)、プリンス・マヒドン賞(タイ国、1997)、紺綬褒章(1999)、ナカニシ・プライズ(日米両化学会、2000)、野口賞(山梨日日新聞社、山梨放送、山梨文化会館、2000)、坊ちゃん賞(東京理科大学理窓会、2000)、アーネスト・ガンサー賞(米国化学会、2005)、アムジェンレクチャー賞(米国工業微生物学会、2006)、ハマオ・ウメザワ記念賞(国際化学療法学会)(2007)、 レジオン・ドヌール勲章受章(2007)、発明協会奨励功労賞(2008)、 テトラヘドロン・プライズ(2010)、アリマ賞(国際微生物学連合、 2011)、山梨県韮崎市名誉市民(2000)、山梨県県政特別功績者(2002)、中国医学科学院名誉教授(1985)、中国曁南大学名誉教授(2006)、独国ローベルト・コッホ研究所名誉所員(1994)、瀋陽薬科大学名誉教授(1997)、ハンガリー国立ラヨス・コーシュス大学名誉理学博士(1991)、米国ウエスレーヤン大学名誉理学博士(1992)、米国生化学・分子生物学会名誉会員(1987)、日本化学会名誉会員(1998)、日本細菌学会特別名誉会員(2003)、日本放線菌学会名誉会員(2005)、英国王立化学会名誉会員(2005)、日本農芸化学会名誉会員(2009)、独国科学アカデミーレオポルデイナ会員(1992)、全米科学アカデミー外国人会員(1999)、日本学士院会員(2001)、仏国科学アカデミー外国人会員(2002)、ロシア自然科学アカデミー会員(2004)、ヨーロッパ科学アカデミー会員(2005)、中国工学アカデミー外国人会員(2005)、瑞宝重光章(2011)、文化功労者(2012)、ノーマン R. ファルンスワース研究業績集(米国生薬学)(2013)、カナダ ガードナー世界保健賞 (2014)、朝日賞 (2015)、米国工業微生物学•バイオロジー学会特別会員 (2015)、文化勲章 (2015)、ノーベル生理学•医学賞 (2015) 等


<学術論文>

  • 1,215 報


<編著書・共著書>

  • 「微生物薬品化学」(南江堂)
  • 「Macrolide Antibiotics-Chemistry, Biology and Practice」 (1st and 2ndedition) (Academic Press)
  • 「The Search for Bioactive Compounds from Microorganisms-Strategies and Methods-」(Springer-Verlag)
  • 他37册

<学術雑誌—大村記念特集号>

  • 「The Journal of Antibiotics」、an International Journal Devoted to Research on Bioactive Microbial Products、48、July (1995).
  • 「Heterocycles」、an International Journal for Reviews and Communications in Heterocyclic Chemistry、69、Dec. (2006).
  • 「Tetrahedron」、the International for the Rapid Publication of Full Organic Research Papers and Critical Reviews in Organic Chemistry、67、Aug. (2011).
  • 「Chem. Pharm. Bull」、an International Journal Devoted to promoting the pharmaceutical sciences、64、July (2016)
  • 「化学と生物」、日本農芸化学会会誌、54、January (2016)
  • 「生物工学会誌」、94、382-400 (2016)